菊池寛実記念 智美術館

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2023

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  • 第10回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の今
    The 10th Kikuchi Biennale
    16 December - 17 March , 2024

    2023年12月16日(土)~2024年3月17日(日)

     菊池ビエンナーレは、2004年度から隔年で開催しているやきものの公募展で、このたび第10回を迎えます。本公募展は、現代陶芸の「今」とその可能性を探るために年齢や制作内容に制限なく陶芸作品を募集し、陶芸における創作活動を行う方の日頃の研鑽の成果を問う場となってきました。今回からは郵送だけでなくウェブからのお申込みも可能となり、過去最多に次ぐ359点のご応募をいただきました。本年8月7日に第一次画像審査を、9月7日に第二次作品審査を行い、入選作53点を選出し、入選作の中から大賞1点、優秀賞1点、奨励賞3点が決定いたしました。制作者の創意と技術が結実した多彩な作品を通し、現代陶芸の「今」をご高覧ください。

    本展覧会の詳細は以下をご覧ください。
    https://biennale.musee-tomo.or.jp/

    【第10回大賞】
    若林 和恵《色絵銀彩陶筥「さやけし」》

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  • 陶芸の進行形
    TOGEI IN THE PROGRESSIVE FORM
    30 September - 26 November,2023

    2023年9月30日(土)~11月26日(日)

     本展は、1970年代から1980年代半ば生まれの世代を中心に25名の陶芸家をノミネートし、現在進行形の陶芸作品をご紹介する展覧会です。25名はいずれも当館が2004年度から隔年で開催している公募展「菊池ビエンナーレ」で受賞、入選してきた作家たちです。現在、40代から30代後半になる彼らは、陶芸の素材や技法、制作工程や歴史、伝統といった陶芸にまつわる要素に独自の視点を持ち、あるいは更に、現代美術の発想や多様なカルチャーからの影響を反映させ、現在の美意識で陶芸作品を制作しています。一つの世代として括るには年齢に幅がありますが、団塊ジュニアを含み、大半をロストジェネレーションが占めるこの世代は日本の陶芸界においては層が厚く、制作の初期段階から「菊池ビエンナーレ」をはじめ様々な公募展を通して意欲的に作品を発表し、存在感を示してきました。その後のキャリア形成は様々で、公募展での発表を継続する作家がいる一方、国内外での個展活動に注力する作家、または出産や育児を経て活動を本格的に再開した作家など、現状は異なります。本年、「菊池ビエンナーレ」の第10回展開催を迎える記念に、その軌跡として25名の作家たちの今をご紹介し、進行形の陶芸作品をご覧いただきます。
     また、「特別展示」として第9回展までの大賞作品を一堂に展示し、併せて「菊池ビエンナーレ」の歴史を振り返ります。

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  • 河本五郎-反骨の陶芸
    Kawamoto Goro
    22 April - 20 August,2023

    2023年4月22日(土)~ 8月20日(日)

     河本五郎(1919~1986)は1000年余り続く陶磁器生産地である愛知県瀬戸市を拠点に、既存の技術や価値観を客観的に捉える論理的な思考で、陶磁器の伝統や歴史に対峙しました。その制作は大きくは前半の陶器と後半の磁器に分かれ、陶器の制作では土の粗い表情や、裂け目、歪み、ひずみを生かして計算し、土の素材感や物質感をダイレクトに造形化する制作を確立しました。そして磁器に移行すると瀬戸の染付と中国陶磁への考察をもとに、現代に必然のある制作を求め、独自の染付や色絵に取り組んだのです。
    本展は、東京で開催する没後初めての回顧展となります。陶磁器を表現素材と捉え、その創作に真摯に向き合った初期から晩年までの70余点で河本五郎の陶芸をご覧ください。

2022
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  • 現代のやきもの
    思考するかたち
    菊池コレクション 展
    Contemporary Ceramics — Thoughts on Form from the Kikuchi Collection
    3 January 2023 - 19 March

    2023年1月3日(火)~ 3月19日(日)

    当館のコレクションは、創立者の菊池智(1923~2016)が1950 年代から蒐集したもので、自身の眼で選び抜いた同時代の多彩な陶芸作品が収蔵されています。このたびの「現代のやきもの 思考するかたち 菊池コレクション」展では、現代陶芸の「かたち」に注目し、智が蒐集した作品に新収蔵作品を加えた約50点の作品をご覧いただきます。 やきものといえば、一般的には皿、鉢、花器などの形を想像することでしょう。しかし、現代の陶芸作品には多彩な形があり、その形を成り立たせている背景に思いを巡らすと、そこには作家の思考が存在していることがわかります。 本展では、器の形態にやきものの魅力を見出し展開した作品や、土を用いた自由な創作としての造形作品を一堂にご覧いただくことで、現代陶芸の形の豊かさと、その根源にある作家の創意に迫ります。 これら造形に対する考察や素材との向き合い方、それに見合う技法の選択や会得といった、創造性を核とした要素から生まれた現代陶芸のかたちをご覧ください。

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  • 畠山耕治 青銅を鋳る
    Koji Hatakeyama ― Founding Worlds of Bronze

    2022年9月17日(土)~ 12月11日(日)

    畠山耕治(1956~)は鋳物の歴史を持つ富山県高岡市を拠点に、青銅を素材とした鋳金による造形に創造性を示してきました。畠山の作品は抑制の効いた造形と臨場感のある表情に特徴があります。鋳金は型に合わせて複雑な形状をとることのできる技法ですが、「青銅の存在そのものを鋳込む」という自身の制作欲求と造形感覚を、直線とわずかな曲線で構成したシンプルな造形に表しています。そして、薬品や熱などによる化学反応で色彩と質感を創出し、青銅の造形に命を吹き込むのです。本展では鋳金の可能性とともに独自性、自立性の確立を求める畠山の制作を初期から新作まで70余点でご紹介します。

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  • 篠田桃紅  夢の浮橋
    Toko Shinoda - Bridge Over Fleeting Dreams

    2022年6月18日(土)~ 8月28日(日)

    篠田桃紅(1913-2021)は、書と水墨という日本文化に深く根付いた領域で、「書く」ことを制作の根本としながら、墨による抽象表現を開拓した芸術家です。その仕事は書、抽象画、版画等の平面作品、建築壁面などの大型制作から、創作の日々や人生観を繊細な筆致で綴った随筆まで、多岐にわたりました。70年以上に及んだ活動においては、時代の変化を捉え新しいものを受けとめながらも、自らの美意識を貫き、水墨の可能性を示し続けた稀有な存在といえます。本展では、2021年に107 歳で逝去した作家を追悼すると共に、改めてその創作をご紹介します。

2021
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  • 第9回菊池ビエンナーレ
    現代陶芸の〈今〉
    The 9th Kikuchi Biennale

    12月11日(土)~ 2022年3月21日(月・祝)

    菊池ビエンナーレは、現代陶芸の振興を目的に菊池寛実記念 智美術館が2004年度から隔年で開催している公募展です。本展では、器の形態から用途のない造形まで形状やサイズに応募条件を設けず、陶芸作品を一律に審査し、展示します。応募資格にも年齢や居住地、陶歴等の制限はなく、9回目となる今回は20歳代から80歳代まで、日本国内を中心にアジア地域からの出品も含む279点のご応募をいただきました。これらの作品を第一次画像審査と第二次作品審査にて選考し、この度は大賞1点、優秀賞 1点、奨励賞3点を含む入選作品54点を一堂に展示いたします。制作者の創意と技術が結実した多彩な入選作品を通し、現代陶芸の「今」をご覧ください。

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  • 中里 隆 陶の旅人
    Takashi Nakazato A Journey through Clay

    2021年8月21日(土)~11月28日(日)

    中里隆(1937年~)は、九州・佐賀県のやきものである唐津焼をルーツとしながら、国内外を自由に行き来し多様なスタイルで作陶を続ける作家です。その作品は、いずれも巧みな作陶技術によって生まれる伸び伸びとした形、釉や焼きによる質感など、やきものならではの魅力を湛えています。唐津の名門陶家、中里太郎右衛門窯十二代目当主(号:無庵、1895~1985)の五男として生まれた中里は、青年期に京都や唐津で作陶を学ぶと、1971年には種子島に渡り、島の土による種子島焼を手がけます。帰郷後、自身の「隆太窯」を築窯し拠点とすると、各地に旅をし、陶芸の技によって人との交流を深め、出会いや学びを楽しみながら創作を行ってきました。海外の土や釉など、現地の素材を活かしながらも、空間を飾り、手で触れ、用いることに喜びを見出してきた日本のやきものの原点である「器」に基礎を置く中里の作品は、作陶の初期から現在まで半世紀以上にわたって多くの人を魅了してきました。本展では鉢や壺などの大型作品から食卓を彩る食器まで、新旧合わせ100点余りの作品によりその幅広い仕事をご紹介します。

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  • 三輪龍氣生の陶
    命蠢く

    2021年4月17日(土)~8月8日(日) 
    ※当初8月1日終了予定より会期変更

    三輪龍氣生(みわ・りゅうきしょう/1940-/本名・龍作、十二代休雪)は、陶によるシンボ リックかつ具象的な造形で、その時々の自身の心情を形にしてきました。率直ともいえるそれらの作品は、生命への喝采、官能の歓び、苦悩、死についての考察、祈りといった人間の本性といえる普遍的なテーマを示します。 三輪は江戸時代から続く萩焼の名門陶家に生まれ育ちますが、茶の湯の世界で親しまれる萩焼の伝統に立脚するというよりも、やきもので自己を表現するために、既存の概念にとらわれない 自由な制作を求めます。彫刻的なアプローチで成される造形は頭蓋骨や乳房、苦悶の胸像や鷲な ど具象的で、自身の死生観や憧憬、情念が投影されています。三輪はこの造形にやきものならではの質感や量感、自身を育む萩の風土や伝統を昇華させて制作を深めると同時に個性を表現するのです。そして作品に立ち上がる圧倒的な生命感は、鑑賞者の内奥に潜む感情をも刺激し、命に訴えかけます。 本展では、人間の根源に迫る三輪龍氣生の陶の造形を、初期の代表作をはじめ、2019年に休雪から龍氣生に改号後に制作された新作を含む 80 点によって紹介いたしました。

2020
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  • 鈴木藏の志野
    造化にしたがひて、四時を友とす

    12月12日(土)~2021年3月21日(日)

    本展は「志野」の重要無形文化財保持者であり現代志野を代表する陶芸家、鈴木藏(すずきおさむ、1934年~)の志野茶碗を中心とする展覧会です。志野は岐阜県の東濃地方で桃山から江戸時代初期にかけて作られたやきものです。20年余りの限られた期間に優れた茶陶や食器が生産され、やがて技術が途絶えていたものが、昭和初期になり陶芸家や学者、愛好家らによって復興され、再評価が進みました。 20代より創作の道に入った鈴木は、郷里のやきものである志野に取り組むと現代作家ならではの技術と創造性をもって挑み、数々の陶芸展で賞を重ね評価を高めました。土や釉、焼き上りなど桃山の志野の美しさを見据えながら、独自の改良を加えたガス窯による焼成や釉薬試験を重ねて作られる鈴木の志野は、多彩な装飾表現と釉調の豊かさ、量感に富んだ形の強さを特徴とし、独特の存在感を放ちます。本展の副題は松尾芭蕉の「笈の小文」より取られており、作り手の個性や創意が自他を超えた先に生まれる、不易流行のかたちを目指した鈴木の作陶姿勢を示したものです。本展では鈴木のライフワークである志野茶碗の未発表作に加え、花生、香炉、大型作品など60点程の作品をご紹介いたします。

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  • 菊池コレクション―継ぐ
    今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、
    三輪休雪、樂吉左衞門

    2020年7月1日(水)~11月29日(日)

    2019年は、京都と萩の伝統ある陶家である樂家と三輪家で改名と襲名が行われました。京都の樂家は桃山時代に長次郎が千利休の思想のもと樂茶碗を創始して以来、約450年にわたって一子相伝で技法を伝え、樂茶碗を現代に継承させてきました。一方、三輪家は長州藩の御用窯として江戸時代前期から続いてきた萩焼の名門陶家で、歴代、休雪の名前を継承し、萩焼の技法を伝えています。 有田では代表的な窯元として十四代今泉今右衛門(1962-)と十五代酒井田柿右衛門(1968-)が伝統の色絵磁器を継いでいます。今泉家は、佐賀・鍋島藩の藩窯で作られた色絵磁器「色鍋島」において、代々赤絵師を務めました。廃藩後に素地作りから焼成まで一貫した色絵磁器の生産に取り組み、今右衛門として現在まで色鍋島を受け継ぎます。酒井田家は日本で初めて磁器の上絵付に成功したと伝えられ、江戸時代前期から有田を代表する色絵磁器の窯元として活動してきました。濁手と呼ばれる乳白色の白磁胎に余白を大きく残して描かれる左右非対称の色絵を特徴とします。
    本展では今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、三輪龍氣生、樂直入の作品を菊池コレクションを中心に展示し、継承するやきものに表す制作者の挑戦と創意のかたちを紹介します。また、十五代樂吉左衞門の初期を代表する個展「天問」に出品された作品20点余りを、同コレクションから一堂に展示いたします。

2019
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  • 第8回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉展

    2019年12月14日(土)~2020年3月22日(日)

    菊池ビエンナーレは、現代陶芸の振興を目的に2004年度から当館が隔年で開催している陶芸の公募展です。本公募展の特色は、陶芸作品を器から用途のない造形まで部門で隔てることなく募集し、審査、展示する点にあります。
     第8回となる今回は、20歳代から80歳代までの幅広い年齢層の制作者から276点の応募が寄せられました。第一次となる画像審査では、審査員の挙手による投票制で125点を通過とし、第二次の作品審査では、作品ごとに各審査員が点数制で審査し、集計結果をもとに合議を重ね、入選54点、さらに入選作の中より入賞5点を選出いたしました。  展覧会では、制作者の創意と技術が結実した入選作品54点を通し、現代陶芸の<今>とその魅力をご紹介いたします。

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  • 生誕100年 藤本能道 ― 生命を描いた陶芸家展

    2019年8月3日(土)~12月1日(日)

    藤本能道(1919-1992)は、色絵磁器の技を極め、現代陶芸の世界に大きな足跡を残した作家です。
    藤本は東京美術学校(現・東京藝術大学)にて工芸図案を学んだ後、色絵磁器の大家である富本憲吉(1886-1963)らに師事し、作陶の道に進みました。青年期には前衛的な作陶家の団体、走泥社に参加するなど方向性を模索しますが、やがて師の仕事を継ぐように色絵磁器の技を追求し、白磁の上に瑞々しい色彩で、草花や鳥など、生命のあるものの美を描き続けました。藤本は既存の色絵技法をさらに展開し、色絵具の改良や絵具と釉薬を融合した新たな表現に取り組み、1986年には「色絵磁器」の技術保持者として重要無形文化財に認定されています。
    当館創立者の菊池智(1923-2016)作品蒐集の中でも最も集中して集めたのが藤本の作品でした。コレクションには藤本の代表作と言える貴重な作品が多数含まれています。本展では、菊池コレクションを中心に、工房のあった青梅市立美術館所蔵の作品や未発表の素描等の資料を加え、その充実した創作の軌跡をご覧いただきます。

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  • 野蛮と洗練 加守田章二の陶芸展

    2019年4月13日(土)~ 2019年7月21日(日)

    加守田章二(1933~1983)は、20世紀後半に活躍し、50歳を目前に亡くなった夭逝の陶芸家です。陶器の形態に造形、文様、質感の関係性を追求し、独自の陶芸表現を切り拓きました。
    大阪府岸和田市に生まれた加守田は、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で陶芸を学び、1959年に栃木県益子町で独立します。灰釉作品で注目されるようになると、制作に集中できる環境と新たな陶土を求めて1969年に岩手県遠野市へ陶房を移しました。遠野で約10年間を過ごした後、晩年の一時期は東京都東久留米市で制作します。
    独立後わずか20年程であったその作陶期間において、加守田は旺盛な制作意欲で絶えず作風を変容させていきました。しかし、いずれの作品にも、大地の根源的な力を表すような土肌の荒々しさや、造形に見る鋭さと緊張感、そして器体を覆うように描き込まれる文様の密度といった力感が示され、同時に、造形と文様を緊密に連動させる計画性や、陶器の形態に個人の表現を求める意思といった現代作家としての思考を窺うことができます。 本展では、1960年代半ばから1980年までの作品66点によって、加守田の短く濃密な作陶人生における制作の変遷と深まりを追うとともに、その魅力に迫ります。

2018
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  • 川瀬忍 作陶50年の間

    2018年11月23日(金・祝)~
    2019年3月24日(日)

    2018年度の冬期より、当館では陶芸家、川瀬忍の作陶50年を記念し、「川瀬忍 作陶50年の間(ま)」展を開催いたします。
    川瀬忍(1950年~)は、十代で作陶の道に進んで以来、現在まで活躍を続ける、現代を代表する青磁作家のひとりです。これまで個展を中心に、現代作家として自身の美意識を加味した独自の青磁を発表してきました。川瀬忍の青磁は細部まで隙のないシャープな形、静謐で深い青の釉調など、いずれも洗練された美を湛えています。高い技量と作家独特の感性から生まれる作品により、今日まで多くの人を魅了してきました。
    本展では、作家の半世紀にわたる活動を見渡しつつ、未発表の最新作に加え、習作的な試みや、作家が憧憬する古美術等を当館の展示空間に自在に取り合わせ、その仕事をご紹介いたします。

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  • 陶と模様のものがたり
    菊池コレクション

    2018年07月28日(土) ~ 2018年11月04日(日)

    何もない空白に模様を施し、飾ろうとすることは、人間の本能的な欲求だといえるでしょう。連続する文様は形にリズムを与え、凝った模様や意匠は見る者の想像力を掻き立てます。とくに工芸においては、作品の世界を深め、広げる重要な要素となります。
    陶磁器に目を向けると、模様は表面を飾るだけではなく、形にそって立体的に展開し、土や釉薬などの素材、焼成が引き出す質感や色彩と相互に影響し合うことで、作品に複雑な表情をもたらします。
    展覧会では「模様」をキーワードに菊池コレクションより作品を選び、技法やモチーフなど、様々な視点を交えることで浮かび上がるものがたりを読み解きながら、現代陶芸の魅力をご紹介します。

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  • 線の造形、線の空間
    飯塚琅玕齋と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸

    2018年4月14日(土)~ 7月16日(月・祝)

    竹工芸の作品は、しなやかで強靭な竹の特性を生かし、編組(へんそ)技術によって形づくられます。竹を割り、削って加工した多様な「線」は豊かな表情や質感を示し、作品に応じて選ばれ、巧みに用いられます。そして「線」の連なりは、構造と同時に装飾ともなり、空間を包み透かして立ち上がる竹の造形を創出するのです。
    竹工が職人的な技芸を超えて、個人の表現として追求されるようになるのは大正、昭和期のことです。本展では、その時期に東京を拠点に活躍した飯塚琅玕齋(1890‐1958)と大阪・堺を拠点に活躍した初代田辺竹雲斎(1877‐1937)を中心に、琅玕齋の兄・二代飯塚鳳齋(1872‐1934)、琅玕齋の息子・飯塚小玕齋(1919‐2004)、そして二代竹雲斎(1910‐2000)、三代竹雲斎(1941‐2014)、四代竹雲斎(1973-)の作品を展示します。二つの家系、作家7人の作品120点余によって、大正、昭和、そして現在までの竹工芸作品を見渡し、各作家が既存の技法や前の世代の制作を革新させてきた「線」による立体造形の魅力をご紹介します。

2017
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  • 第7回菊池ビエンナーレ
    現代陶芸の〈今〉

    2017年12月16日(土)~ 2018年3月18日(日)

    公益財団法人菊池美術財団は、21世紀の陶芸界の新たな展開を探ることを目的に、全国から作品を公募し、2004 年から隔年で「菊池ビエンナーレ」を開催しています。当館は現代陶芸の紹介を主として活動を展開しており、菊池ビエンナーレはその主軸を担う事業と考えております。

    第7回を迎えた今回は、日本国内を中心に総数322点のご応募をいただき、第1次画像審査、第2次作品審査を通過した入選作52点(その内入賞5点)が選出されました。展覧会では、すべての入選作を一堂に展示いたしました。選ばれた作品52点は、いずれも制作者それぞれの創意と技術を反映し、バラエティーに富んだ陶の表情を見せています。この多彩な作品群を通し、現代陶芸の「今」とその魅力をご覧ください。
    入賞者:
    大賞:和田的 《表裏》/優秀賞:津守愛香 《人魚仏》/奨励賞:田島正仁 《彩釉鉢》/釣 光穂 《Ivy》/中田雅巳 《SEN》

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  • 八木一夫と清水九兵衞
    ― 陶芸と彫刻のあいだで

    2017年9月16日(土)~ 12月3日(日)

    第二次世界大戦の敗戦からの復興期に新たな陶芸を模索し、それぞれの立場から陶芸界に新風を送り込んだ八木一夫(1918- 1979)と清水九兵衞(旧姓塚本廣、後に清水洋、裕詞、七代六兵衞 1922- 2006)、二人の仕事を辿る展覧会です。
    八木一夫は、鈴木治、山田光ら陶芸家仲間と1948年に結成した走泥社の中心的存在であり、用途を持たない彫刻的な作品を“オブジェ焼き”と称して制作し、その表現としての可能性を追求し続けました。一方、名古屋に生まれ名古屋高等工業学校で建築を学んだ清水九兵衞は、東京藝術大学工芸科鋳金部に在籍していた1951年にガラス、家具デザイン、染織、漆工の分野で活動する仲間らと新工芸協会を結成し、最新のモダンリビングに合うインテリアや器物を提案する展覧会を東京、銀座で行う傍ら、江戸時代から続く陶家、清水六兵衞家の養嗣子となり陶芸の道に入りました。
    実用と表現、土とフォルム、陶芸と彫刻のあいだに新たな表現領域を見出した二人の挑戦は今も色褪せることなく、現代陶芸の多様な表現との繋がりを感じさせます。本展での紹介は彼らの幅広い表現活動の一端ではありますが、その自由な取り組みをご覧いただきたく思います。

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  • 珠玉の現代陶芸
    マダム菊池のコレクション

    2017年6月10日(土)~ 9月3日(日)

    本展は、美術館設立者である菊池智(きくち とも、1923-2016)が集めた陶芸のコレクションより、優品を選び展示するものです。
    菊池智の父は炭鉱やガス会社の経営などエネルギー産業に従事した実業家の菊池寛実(きくち かんじつ、1885-1967)で、智自身も当館の理事長職を務めながら、事業を受け継いで実業家としても活動し、文化と経済の両面に寄与しました。
    1950年代後半から現代陶芸の蒐集をはじめた智は、1983年にアメリカのスミソニアン自然史博物館で自身のコレクションによる「現代日本陶芸展」を開催します。この展覧会は好評を得て、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館に巡回しました。そして2003年に自身のコレクションを基に当館を設立し、現代陶芸の展覧会を開催することで普及活動を継続してきたのです。
    本展では、菊池自身の眼で選び抜いたコレクションから約60点を展示し、その足跡をたどると共に、菊池智が情熱をそそいだ現代陶芸の魅力をご紹介します。

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  • 篠田桃紅 昔日の彼方に

    2017年3月29日(水)~ 5月28日(日)

    本展は、2017年3月に104歳を迎えられた篠田桃紅氏の作品をご紹介する、展覧会です。
    篠田桃紅氏(1913〜)は墨と紙の芸術家です。中国の大連で生まれ、幼年時に父に手ほどきを受けて以来、ほぼ独学で書を学んだ篠田氏は、1956年から58年にはニューヨークに渡り、当時先端の美術の洗礼を受けながら、墨による表現の可能性を広げていきます。帰国後も、既存の筆法や書風を超えて文字を追求し、墨線による抽象のかたちへと昇華させた氏の作品は、国内外で高い評価を受けて来ました。
    当館は篠田氏の作品を館内に常設展示する、所縁ある美術館として2013年に百寿を記念する展覧会を開催いたしましたが、氏は現在も旺盛に制作を続けておられます。本展では前回展と同様に、作家のメイン・ディーラーとして40年来活動を見守ってきたノーマン・トールマン氏を監修者としてお迎えし、旧作の絵画や書に、2016、2017年の最新作を加えて、篠田桃紅の世界をご紹介いたします。

2016
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  • 第2回菊池寛実賞 工芸の現在

    2016年12月17日(土)~ 2017年3月20日(月・祝)

    本展では工芸分野で活躍する作家を、陶磁、金工、ガラス、竹工、截金ガラスから12名ご紹介し、新作から近作約60点を展示いたしました。
    現代の日本において、工芸は大きく広がりをみせています。本展でも、出品作家ごとに異なる制作への取り組みは、多彩な作品を生み出します。
    陶芸では、焼成によって生じる土肌の質感、釉薬や上絵による色彩、躍動感や緊張感のある独自の造形に見所があります。他にも、動感のある造形に陰影を纏う無色透明の吹きガラスや、鉄を素材に有機的な質感や形を創出する金工作品があり、竹工は編み目の連なりが構造を示して作家の思考を表すかのようです。そして、截金(きりかね)ガラスは、ガラスの色・形と截金を合わせた立体的な文様構成に見応えがあります。作家12名による充実した制作を通し、現代における工芸の多様な表現とその可能性をご覧いただきました。

    【出品作家】井口 大輔(陶磁)、神谷麻穂(陶磁)、亀井洋一郎(陶磁)、川端健太郎(陶磁)、中田博士(陶磁)、藤笠砂都子 (陶磁)、三嶋りつ惠(ガラス) 、留守玲(金工)、山本茜(截金ガラス)、植松竹邑(竹工)、杉浦功悦(竹工)、谷岡茂男(竹工)

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  • The Power of Colors
    色彩のちから

    2016年8月6日(土)~ 12月4日(日)

    菊池コレクションは、当館創立者の菊池智(1923-2016)が長年にわたり蒐集した現代陶芸のコレクションです。土と炎から生みだされるやきものへの愛好から始まった蒐集は、その魅力を広めたいという情熱となり、1983年には米国スミソニアン博物館にて日本の現代陶芸を紹介する大規模な展覧会を開催するに至りました。彼女の美意識を反映した菊池コレクションには、日本の現代陶芸を語る上で欠かせない作家の多彩な作品が収蔵されています。
    「色彩のちから」というテーマについて:
    色は、意識・無意識に関わらず人間の心や身体に作用する大きなちからを持っています。芸術表現においても色彩は重要な要素であり、陶芸の分野でも作品がまとう美しい色彩は、大きな魅力のひとつといえるでしょう。陶芸家は経験を積み、技を磨くことで、素材に潜む思がけない色のちからを探り出し、土に豊かな表情を与えてきました。久しぶりの菊池コレクション公開となる本展では、陶芸家およそ36人、55件の作品を、「色彩のちから」をテーマにご紹介し、現代の作り手が挑み、生み出した、豊かな色彩の世界をお楽しみいただきました。

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  • 秋山陽 アルケーの海へ

    2016年4月2日(土)~ 7月24日(日)

    2016年現在、自身の母校である京都市立芸術大学で教授として後進の指導にあたる秋山陽(あきやまよう 1953-)は、1980年代から現代陶芸の最先端を走り続けている陶芸家です。
    展覧会名に用いた「アルケー」という言葉は、ギリシャ語を語源とし、原初、根源を意味します。原初的なるものへの憧れや希求が発想の根底にあるという秋山の仕事は、根源や原理を探究する哲学者のようであり、作品は、折々の思考のかたちであるとも言えます。
    作品は、黒褐色をした彫刻的な造形であり、黒陶、もしくは本焼き焼成後に鉄粉をほどこす手法でつくられています。マチエールやフォルムには土の物性が強く意識され、作品の寸法はやきものとしては破格のスケール感を持ち、小さな作品でもおよそ50センチ四方ほどあり、大型の作品ともなれば長径数メートルにわたります。展覧会では新作・近作を中心に、80年代、90年代の代表作を加えたおよそ40点の作品により作家の造形世界をご覧いただきました。

2015
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  • 第6回菊池ビエンナーレ
    現代陶芸の〈今〉

    2015年12月19日(土)~ 2016年3月21日(月・祝)

    菊池ビエンナーレは、現代陶芸の振興を目的に、2004年から隔年で 開催している陶芸の公募展です。本公募展の特色は、陶を素材とする作品であれば、実用や造形など部門を設けず審査することで、陶芸の現在と未来を広く見渡していこうという点にあります。
    第6回菊池ビエンナーレの作品選考は、2015年夏の締切にて公募、審査を行い、応募総数318点のご応募より50点の作品が入選しました。さらに入選作より大賞1点、優秀賞1点、奨励賞2点、計4点の作品が入賞作に選ばれました。展覧会ではそれら全ての入選作を智美術館にて一堂に展示いたしました。
    出品者それぞれの完成と技術が決勝した作品群は、形、質感ともにバラエティーに富んでいます。多彩な作品群を通し、現代陶芸の「今」とその魅力をお楽しみいただきます。会期中には入賞・入選作家による対談、トーク等のイベントを開催いたしました。

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  • 夢つむぐ人 藤平伸の世界

    2015年8月8日(土)~ 12月6日(日)

    藤平伸(1922~2012)は、京都の五条坂で操業する藤平製陶所(現・藤平陶芸)の次男として生まれ、同地で活動した陶芸家です。30代より作陶家として独立すると、やがて深い精神性と滋味ある作風で独自の世界を創出しました。
    31歳で日展に初出品し入選すると頭角を現し、35歳の時には日展特選を受賞するなど注目を受けるようになりました。その後は、1970年より京都市立芸術大学の陶芸科にて教鞭を取りつつ四十年以上に渡り日展へ出品、やがて日本陶磁協会賞(73年。98年・同金賞)、毎日芸術賞(93年)を受賞するなど陶芸家として高い評価を受けています。
    実用の器からオブジェや陶彫、そして書画にいたるまで、藤平の作品には、伸びやかな形の中に、創作を楽しみ、人生の機微を謳うような豊かな詩情が漂います。没後初の回顧展となる本展では、陶磁器、水彩、書など100点余りの作品により仕事の全貌をご紹介し、その魅力に迫ります。

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  • 遠くて近い 井上有一

    2015年4月4日(土)~ 7月26日(日)

    井上有一(いのうえゆういち、1916-1985)は、小中学校の教師として勤めるかたわら、創作活動を行い、書の道を追求しました。紙をはみ出して書かれる豪快な一字書や宮沢賢治の作品を基にした多文字書からは、命を削るようにして制作に打ち込んだ作家の気迫が伝わってきます。展示では、書壇にデビューした1950年から晩年までの約50点の作品によって、井上有一の創作を一望します。
    近年、井上の作品は、ドイツのランゲン美術館での二人展、中国の北京皇城芸術館での個展やアラブ首長国連邦の「シャルジャビエンナーレ11」出品など、海外でも改めて注目されています。生誕100年を間近に控え、本展では、一字書、多文字書や晩年に制作されたコンテによる書の他、晩年の自画像や陶器も合わせてご紹介いたします。

2014
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  • 菊池寛実賞 工芸の現在

    2015年1月24日(土)~ 3月22日(日)

    「菊池寛実賞 工芸の現在」展は、智美術館が2014年度より新たに立ち上げた工芸の展覧会です。本企画では、陶磁、金工、漆工、木竹工、ガラス、染織、その他(七宝、紙、石、人形など)工芸の諸分野において、用の器から造形作品まで、質の高い優秀な作品を制作する作家をノミネートし、ご紹介いたします。出品作家は、専門家で構成する選定委員会によって選ばれた方々です。
    また最優秀作家には「菊池寛実賞」を授与しその活動を奨励することとし、展覧会に先だって行われた審査により、染織の築城則子氏に菊池寛実賞を授与することを決定いたしました。

    出品作家:相原健作(金工)、石田知史(ガラス)、江波冨士子(ガラス)、神農巌(陶磁)、須田賢司(木工)、田口義明(漆工)、築城則子(染織)、中村信喬(人形)、新里明士(陶磁)、春木均夫(人形)、武関翠篁(竹工)、山本晃(金工)
    選定委員(6名):
    今井陽子(東京国立近代美術館主任研究員)、内田篤呉(MOA美術館館長)、唐澤昌宏(東京国立近代美術館工芸課長)、黒川廣子(東京芸術大学大学美術館美術情報研究室准教授)、土田ルリ子(サントリー美術館学芸副部長)、菊池節(菊池寛実記念 智美術館館長)
    審査委(3名):
    乾由明(京都大学名誉教授)、金子賢治(茨城県陶芸美術館館長)、菊池智(菊池美術財団理事長) (全て敬称略)

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  • 岡部嶺男 火に生き 土に生き

    2014年10月11日(土)~ 2015年1月12日(祝・月)

    岡部嶺男(おかべ みねお)は、1919年(大正8)、瀬戸の窯業の中心地であった窯神山(かまがみやま)に、加藤唐九郎の長男として生まれました。幼い頃から陶器づくりを身近に見て育ち、十代の頃にはすぐれた才能を発揮しますが、陶芸家として作家活動を始めたのは、第二次世界大戦が終結し復員した、1947年(昭和22)以降のことです。岡部が手がけた技法は幅広く、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部をはじめ、「古瀬戸」と称する灰釉、鉄釉、飴釉、さらには青瓷や天目など多岐にわたり、これら伝統の技法や形式を手がかりに自身の感性を表現した新たな造形は、発表時から高い評価を得ました。
    展覧会では、織部、灰釉、青瓷など、それぞれの代表作を含めた65点余により、作品世界の魅力をお楽しみいただきました。

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  • 陶の空間・草木の空間
    ―川崎毅と関島寿子

    2014年7月12日(土)~ 9月28日(日)

    本展は、「やきもの」と「かご」という異なる分野の二人の作家の作品を「空間」をキーワードにご紹介する展覧会です。
    川崎毅(かわさき・つよし/1942~)がつくる陶の「街」は、家のかたちの組み合わせ方次第で、どこかの街並みや浮遊都市、崖の上の家など様々な風景を表します。平面と直線で構成した家形の表情と土の量感が、作品に静かな存在感を与えます。
    関島寿子(せきじま・ひさこ/1944~)の「かご」作品は、実用的な「かご」とは異なり、螺旋を描く縄、蔓や樹皮の絡まりなど、「かご」の構造そのものの美しさを追求した造形です。作品は植物の線がつくる空間で構成されており、その連なりは、編み目や植物の重なり、質感といった細部にまで視線を誘導し、編むという行為と植物素材の多様な魅力を伝えます。
    「家のかたちを組み合わせる」、「植物を編む」というそれぞれのテーマが、時間 の経過とともに展開していく様をご覧いただきました。

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  • 藤本能道 色絵に生きる
    Fujimoto Yoshimichi: A Vocation for Overglaze Enamels

    2014年4月12日(土)~ 6月29日(日)

    藤本能道(ふじもとよしみち、1919~1992)は、近現代の作陶家として大きな足跡を残した富本憲吉(1886~1963)と加藤土師萌(はじめ)(1900~1968)に師事し、その色絵磁器の系譜を継ぎつつも独自の技と作風を追求して、20世紀の日本陶磁に新たな色絵表現を切り開いた陶芸家です。藤本は、従来の日本の色絵にはなかった中間色の絵具を積極的に採用し、白磁の素地自体に釉薬の色を重ね、絵画のような繊細な色調と柔らかな質感表現を色絵にもたらす「釉描(ゆうびょう)」の技を極めるなど、技術研究と実践により多くの優れた作品を生みだし、1986年には重要無形文化財「色絵磁器」保持者に認定されています。
    当館の創立者、菊池智は作家と親交を深める中で、その色絵の美しさに魅了され、作品蒐集を続けてきました。本展では、菊池コレクションより色絵の初期から最晩年にかけての作品を選び、藤本能道の作陶の軌跡と色絵表現の深まりをご覧いただきます。

2013
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  • 隠﨑隆一 事に仕えて
    KAKUREZAKI RYUICHI  Serving for Integrity

    2014年1月18日(土)~ 3月30日(日)

    本展は、現代の備前焼を代表する陶芸家である隠﨑隆一(かくれざき りゅういち)氏の作品の全貌をご紹介する展覧会です。
    隠﨑氏は1950年に、長崎県の五島列島、椛島(かばしま)に生まれました。大学にてグラフィックデザインを学び、デザイン会社勤務を経た後、岡山県備前市で伊勢﨑淳氏(現・重要無形文化財「備前焼」保持者)に師事し、独立後は同県瀬戸内市長船に窯を築いて陶芸家として歩んできました。
    「事に仕えて」とは「自然への畏敬の念とあるがままの心を表現すること」という隠﨑氏の作陶理念を表した言葉です。本展では、1983年の修業時代に制作された作品から造形性の高い彫刻的な作品、食器、茶碗など最新作にいたるまでの約55点により、30年にわたる隠﨑氏の仕事をご紹介いたしました。

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  • 現代の名碗
    ―川喜田半泥子、加藤唐九郎、金重素山、 三輪壽雪、岡部嶺男、鈴木藏、樂吉左衛門から 若手作家まで

    2013年9月14日(土)~ 1月5日(日)

    茶碗は桃山時代に国産品が茶の湯の場に登場した頃から、使い手の美意識、思念を映す役割を担ってきました。そのために、制作者にとっても、「掌中の宇宙」といわれるごとく、深遠な造形といえます。古今を通じて同じ茶碗が一つとして存在しないのもそのような理由によるものと思われます。
    本展では、近現代における茶碗のあるべき様を求め、川喜田半泥子、加藤唐九郎、石黒宗麿、鈴木藏、十五代樂吉左衞門から若手作家にいたるまで、茶碗制作に挑む作家たちの茶碗を集め、展観いたしました。

    出品作家:
    川喜田半泥子、河井寬次郎、石黒宗麿、荒川豊蔵、中里無庵、金重陶陽、加藤唐九郎、金重素山、三輪壽雪、岡部嶺男、藤平伸、清水卯一、辻清明、鈴木藏、田中佐次郎、鯉江良二、金重まこと、岡田裕、小川待子、黒田泰蔵、高垣篤、辻村史朗、安食ひろ、 中村康平、西端正、前田正博、樂吉左衞門、 隠﨑隆一、金重有邦、川瀬忍、兼田昌尚、前田昭博、三原研、今泉今右衛門、伊藤秀人、加藤高宏、 新里明士、和田的、桑田卓郎

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  • 第5回菊池ビエンナーレ 展
    ―現代陶芸の〈今〉

    2013年6月8日(土)~ 9月1日(日)

    菊池ビエンナーレは、21世紀の陶芸界の新たな展開を探ることを目的に、隔年で全国から作品を公募し、優れた作品を展示する公益財団法人菊池美術財団の取り組みです。
    当館は開館以来、現代陶芸の紹介を主として活動しており、菊池ビエンナーレはその主軸を担う事業です。 5回目となる今回は、2012年の秋に作品を募り、応募総数296点の中から第一次画像審査、第二次作品審査を経て入選48点(うち入賞13点)の作品を選出いたしました。展覧会では、それらの入選作を展観いたしました。
    また、会期中には関連行事として、入賞作家と審査員をゲストパネリストにした2回の研究会と、岐阜県現代陶芸美術館館長、榎本徹氏による講演会を開催、夏休みに合わせて陶芸家・杉浦康益氏に講師とした、子どもワークショップを実施いたしました。

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  • 百の記念 篠田桃紅の墨象 展
    TOKO SHINODA, A Lifetime of Accomplishment

    2013年4月13日(土)~ 5月26日(日)

    2013年に百歳を迎えた墨象(ぼくしょう)の芸術家、篠田桃紅氏は半世紀以上にわたって第一線で活躍を続けておられます。
    1913年、大連に生まれた篠田氏は、幼い頃から書に親しみ、若くして書家としての活動を始め、既存の筆法や書風を超えて文字を追求するうちに抽象のかたちへと行きつきました。初めて氏の抽象作品が世の中に認められたのは、1956年から58年にかけて滞在したニューヨークです。世界の美術の中心地で全盛期の抽象主義絵画を眼にし、作家たちとの交流から大きな影響を受け、また、彼らからの称賛が後押しとなって、帰国後は墨による独自の作風で新たな抽象表現を確立していきました。
    展覧会では1956年制作の作品から2012年の近作まで、書画・版画、計42点を展示いたします。篠田氏のディーラーとして、長年、作品を国内外に紹介してこられたノーマン・トールマン氏所蔵の作品を中心にご覧いただきした。

2012
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  • 三輪壽雪・休雪 ― 破格の創造

    2013年1月19日(土)~ 3月31日(日)

    三輪家は長州藩の御用窯として江戸時代前期から続いてきた萩焼の名門陶家です。歴代休雪の名を継承し、萩焼の伝統技法を現代に伝えてきました。本展では「萩焼」の重要無形文化財保持者、三輪壽雪氏(じゅせつ、十一代休雪、本名・節夫/1910~2012年)の代表作と、壽雪氏の長男、当代休雪氏(きゅうせつ、本名・龍作/1940年~)の代表作を、山口県立萩美術館・浦上記念館のコレクションを中心にご覧いただきます。
    壽雪氏は茶陶を制作の中心に据え、三輪家の伝統の上に独自の個性を表出させた造形を追求しました。一方、十二代休雪氏は、萩焼の手法による彫刻的な作品を制作し、「愛(エロス)」と「死(タナトス)」という本質的なテーマを自らのライフストーリーと重ね合わせて、自身の内的世界を表現してきました。この度の展示では壽雪氏の造形を7点に代表させ、十二代休雪氏については「ハイヒール」や「LOVE」などの初期の作品から近作の「龍人伝説」にいたるまでの38点を選び展示いたしました。

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  • 十三代・十四代今泉今右衛門
    ― 色鍋島の粋

    2012年10月6日(土)~ 2013年1月6日(日)

    今泉今右衛門家は、江戸時代に佐賀・鍋島藩で発展した色絵磁器である「色鍋島」を継承する陶家です。鍋島藩の藩窯で代々御用赤絵師を務め、藩窯が廃止された後は、素地づくりから窯焼まで全工程に取り組み、高度に様式化され、気品と創造性に溢れる色鍋島の意匠を現代に伝えます。
    十三代今右衛門(1926~2001)は、伝統に立脚しながらも、「吹墨(ふきずみ)」「薄墨(うすずみ)」の技法を確立し、独自の文様を組み合わせ、色鍋島に現代性を打ち出しました。
    十四代(1962~)は、今右衛門を襲名して10年、磁器に白化粧を用いる「雪花墨はじき」の技法や、上絵技法「プラチナ彩」を新たに取り入れるなど、伝統に自らの創意を吹き込み、現代における色鍋島を精力的に追及しています。展覧会では、十四代の作品を中心に、十三代の代表作をあわせた約50点により、現代に息づく「色鍋島の粋」をご紹介いたしました。

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  • 東京藝大出身の陶芸家たち
    菊池コレクションから

    2012年7月7日(土)~9月23日(日)

    東京藝術大学における陶芸教育は、1955年に陶磁器講座、研究室が正規に発足して以来、1963年には大学院を含む専門課程の「陶芸講座」として整備され、半世紀余りの歴史をもちます。その間、轆轤を中心とする伝統をふまえた技術習得に教育の重点が置かれながらも、加藤土師萌(はじめ)、藤本能道(よしみち)、田村耕一、浅野陽(あきら)、三浦小平二、島田文雄等、旺盛な作家活動を行う歴代教授の下、助手や学生たちが共に学ぶ場となった同講座からは、用の器はもとより造形的作品に挑む作家まで、多彩な人材が輩出されてきました。
    当館の創立者、菊池智は現代陶の蒐集を通じ、色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)であった藤本能道(1919-1992)との親交を深めましたが、それを端緒として、藤本の教授時代を中心に、陶芸講座の初期に在籍した作家たちの作品も多く収蔵していきました。美術館開館10周年を迎えた本年、コレクション展として初めて同学出身陶芸家の作品を一堂に展示いたします。東京藝術大学の陶芸教育より生まれた作品をご覧いただき、やきものの可能性と魅力を感じていただく機会になればと存じます。

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  • 茶の湯の現代 ―用と形―

    2012年4月14日(土)~6月24日(日)

    2012年度より隔年で開催する公募展「茶の湯の現代―用と形―」の第1回展です。本公募展は現代における造形表現と茶道具との接点を探るべく企画したもので、陶磁・漆工・木工・竹工・金工・ガラスなど幅広い分野を対象としております。
    この度は、2011年秋にご応募いただいた383点の作品から、第1次画像審査と第2次作品審査をおこない、選出いたしました入選作54点(大賞1点、優秀賞2点、奨励賞10点を含む)、ならびに特別出品2点をあわせた56点を展示いたします。

    ●入賞者13名●大賞:灰外達夫/優秀賞:池田巖、宮地陶博/奨励賞:安達征良、磯飛節子、織田阿奴、倉員誠二、櫻木綾子、玉村咏、畠山耕治、馬淵弘幸、森和彦、渡辺国夫
    ●入選者41名
    ●特別出品●川瀬忍、鈴木藏 (敬称略)

    本公募展の今後の詳細はこちらをご覧ください。

2011
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  • 金重有邦 生まれくるもの

    2012年1月21日(土)~3月31日(土)

    金重有邦(かねしげ・ゆうほう)氏は、昭和25(1950)年、岡山県備前市伊部に、陶芸家、金重素山(そざん)の三男として生まれ、武蔵野美術大学で彫刻を学んだのち、父のもとで陶芸を始めました。父、素山(1909~95)は、備前焼中興の祖とされる兄、金重陶陽(とうよう 1896~1967)とともに、桃山時代に焼造された古備前の土味と焼け成りを求めてその再興に尽力し、ことに火襷(ひだすき)の焼成に創意工夫し、現代の備前焼の展開に大きな影響を及ぼしました。
    有邦氏の作陶も、彼ら二人が築いた礎の上にあるものですが、2002年頃からは、陶陽が見出した上質な「田土(たつち)」の代わりに自ら吟味した「山土(やまつち)」を用い、土に合った成形技術や新しい窯による焼成法を探求し、独自の作風を展開しています。
    「生まれくるもの」と題した本展では、この10年間に制作された作品のなかから厳選したおよそ60点の花入、水指、甕、茶器、茶碗を展観いたします。

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  • 胸中の山水 細川護熙

    2011年10月9日(日)~2012年1月9日(月・祝)

    細川護熙氏は、作陶をはじめとする創作活動に加えて、2009年より油絵を意欲的に制作しておられますが、本展は、細川氏の、美術館おける最初の、そして本格的な油絵による展覧会です。
    「胸中の山水」の作品群は、本展のために制作された新作です。 「胸中の山水」とは、細川氏が若い頃から愛唱してこられた漢詩の世界のことです。人事の儚さを雄大な自然に照らし合わせて情感豊かに詠い上げる漢詩には、時間の悠久なる流れと壮大なスケール感があり、細川氏の作品は、そうした漢詩の魅力を、色彩の世界に見事に表しています。
    展示作品は、陶淵明(とうえんめい)「飲酒」、崔顥(さいこう)「黄鶴楼」、王維(おうい)「送別」、張継(ちょうけい)「楓橋夜泊」、柳宗元(りゅうそうげん)「江雪」など、自選の漢詩からイメージした絵画および、漢詩の一節を直筆した書の作品と、それらに合わせ、茶陶や五輪塔、陶仏、童子像などの代表作も合わせて陳列いたします。

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  • 川瀬忍の青磁
    天青から 静かなる青へ

    2011年7月9日(土)~9月25日(日)

    本展は、現代を代表する青磁作家のひとり、川瀬忍氏の、美術館での初めての個展です。
    青磁の初源は古く、紀元前に中国で生まれ、現在まで3500年にわたって作り続けられた、豊かな歴史的背景を持つやきものです。展覧会の副題にある「天青」とは、10世紀中頃、五代・後周の皇帝世宗柴栄が“雨過天青雲破処”の色を宿す青磁を作るよう命じた、という伝承に由来する言葉で、雨上がりの澄んだ空の色、青磁の理想の色を示す言葉です。
    中国陶磁を範として優品を制作してきた竹春(初代祖父、二代父)の家に生まれ、40年以上にわたり青磁に取り組んできた氏の作品は、繊細な青の色彩と巧みな造形により、高い評価を受けてきました。その作品は、初期には古典の世界に学び、釉や形の研究を進めましたが、1980年代からは独自の作風を求めるようになり、現在にいたるまで、川瀬氏ならではの造形を展開させてきました。
    展覧会では、作陶の変遷を辿る初期の秀作から、本展にて発表する最新作までを厳選し、70点余りの作品によりその青磁の魅力をご紹介いたします。

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  • 第4回菊池ビエンナーレ展

    2011年4月2日(土)~6月26日(日)

    菊池ビエンナーレは、21世紀の陶芸界の新たな展開を探ることを目的に、隔年で全国から作品を公募し、優れた作品を展示する財団法人菊池美術財団の取り組みです。
    第4回となる今回は、日本全国から総数423点のご応募をいただきました。第一次、第二次の審査を行い選出いたしました、入賞7点を含む全入選作49点を本展にてご紹介いたします。作家それぞれの感性と技術が結晶した作品は形体、質感ともにバラエティーに富み、見ごたえがあります。これら多彩な作品群を通し、日本における現代陶芸の「今」とその魅力をご覧ください。

    ●入賞作品●
    大賞:岡田 裕 《炎彩花器》
    優秀賞:中村 伸子 《花の大地》
    奨励賞:吉川 周而 《四つが形作る形》/崎山 隆之 《扁壺「聴涛」》/五味 謙二《彩土器》/今野 朋子 《creature》/山口 美智江《夢想―幻―》
    (敬称略)

2010
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  • 流旅転生 ― 鈴木藏の志野展

    2010年11月20日(土)~2011年3月21日(月・祝)

    1994年に「志野」の技術保持者として重要無形文化財に認定された鈴木藏氏(すずきおさむ/1934~)は、現代の美濃を代表する作陶家です。鈴木氏は陶磁器生産地として長い歴史を持つ岐阜県土岐市に生まれ、16末~17世紀初頭にこの地で焼かれた志野焼きに取り組み続けてきました。
    「志野は日本で生まれた独特の創作であり、日本人の感性、美意識といった最も基本的なすべてが凝縮されている」
    鈴木氏のこの言葉は、志野の本質を突くものであり、簡潔な表現の背景には、半世紀にわたる伝統との対峙があり、積み重ねた思いを凝縮した深みがあります。氏は志野の本質を、現代にどのように継承し、未来に伝えるべきかを精魂傾けて追及してきました。 そうした作陶姿勢を最も象徴するのが、ガス窯専一による焼造です。志野は薪の窯で焚くのが最良とされた時代から鈴木氏はガス窯での焼成にこだわり抜き、今日に至るまで自身の創意による作陶を目指してきました。
    展覧会では、鈴木氏の食器制作の原点でもある「流旅転生」展 (於:菊池ゲストハウス1985年)出品作と、これまでの造形の変遷をたどる大皿、花器、茶碗、水指などの代表作を展示いたしました。

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  • 第3回智美術館大賞展 現代の茶

    2010年7月31日(土)~ 11月7日(日)

    智美術館では、2006年度より、隔年の開催で「智美術館大賞展 現代の茶―造形の自由・見立ての美」を企画いたしております。この展覧会は、現代日本の陶芸を担う作陶家の方々に、御自身の自由な精神の所産としての茶陶を制作していただき、そこから二十一世紀の茶の湯のあり方を展望しようとするものです。
    第3回目となる本展では過去最多、29人の方々にご出品いただきました。ご参加いただいたのはベテランから若手まで、現在の陶芸界を牽引する気鋭の作陶家ばかりです。現代陶の創意が挑む、新しい茶陶のスタイルを展観いたしました。

    出品作家:秋山 陽/市野 雅彦/伊藤 赤水/伊藤 正/今泉 今右衛門/内田 鋼一/岡田 裕/小川 待子/隠崎 隆一/加藤 清之/加藤 高宏/金重 有邦/兼田 昌尚/川瀬 忍/北村 純子/鯉江 良二/小池 頌子/崎山 隆之/鈴木 藏/高垣 篤/德澤 守俊/西端 正/深見 陶治/前田 昭博/前田 正博/三原 研/森野 泰明/柳原 睦夫/樂 吉左衞門(五十音順、敬称略)

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  • 智恵子抄
    高村光太郎と智恵子 その愛

    2010年4月29日(木・祝)~7月11日(日)

    高村光太郎と智恵子―明治から昭和にかけて、彫刻や詩作、文筆活動へと幅広く活躍した夫と、光太郎への愛に生き、自らの創作を試みながらも、精神を病み、道半ばで没したその妻、智恵子。純粋な愛を貫いた二人の記憶は、詩集『智恵子抄』によって、今なお鮮烈な印象を残しています。
    著名な木彫家、高村光雲を父にもち、日本の伝統と西洋からの近代思潮の中で自身の芸術を模索した光太郎にとって、智恵子との出会いと生活は、その創造を支える基といえるものでした。けれども、智恵子は宿命的な精神上の素質と、芸術的苦悩、実家の没落などから次第に精神を病み、光太郎を残して昭和十三年に亡くなります。
    智恵子は最晩年、光太郎が病床に持参した千代紙を日々丹念に切り抜いて、千枚を超える「紙絵」を遺しました。それらは全て光太郎に見せるためだけに制作された極めて私的なものでしたが、その繊細な表現と独自の色彩感覚は、没後公開されると、多くの人に深い共感をあたえ、今日に至っています。現在、紙絵のオリジナルは材質の脆弱さのため、長く展示することは困難となっていますが、光太郎の甥で写真家の高村規氏により複製され、鮮やかな色彩で細部まで鑑賞することが出来るようになりました。本展は、光太郎の諸作品と、現存する中から選ばれ再現された智恵子の紙絵により、二人の純度の高い芸術を回顧するものです。

2009
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  • 藤本能道展 命の残照のなかで

    2009年10月31日(土)~2010年4月18日(日)

    本展は、藤本能道が色絵磁器を大成した70年代半ばから最晩年に焦点をあて、54件(156点)の作品で構成されています。とくに展示の中心となるのは1992年3月より開催された藤本の生前最後の個展、「陶火窯焔(とうかようえん)」展に出品された一群です。
    陶火窯焔展では、燃えるような辰砂の赤が印象的な、一連の作品が発表されました。赤い花に群がる虫や、炎のなかに飛び込む蛾などをモチーフとしたそれらの陶筥や扁壷は、従来藤本がこだわり続けた、写生に基づく緻密な表現から離れ、作家の内なる思いがあらわれた、藤本の新境地と言うべきものでした。しかし、新たな飛躍への道が示されたときには、作家の余命は幾許も残されてはいませんでした。藤本は、展覧会から2ヵ月後の1992年5月、73歳でその生涯を終えます。
    作家の生命を凝縮したかのような最後の作品群は、当時個展を任された、当館創立者でもある菊池の手元に残されました。以来、いつか最良の形でこれらを再び公開したいとの思いは、当館をオープンさせた当初から、菊池が抱いていた願いでありました。そしてこの度、本展覧会にてこれらの作品が一堂に公開されるのは、92年以来、17年振りのこととなります。

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  • 赤 黒 金 銀 緑 青
    前田正博の色絵

    2009年6月27日(土)~2009年9月23日(水・祝)

    前田正博(1948~)は東京藝術大学にて藤本能道、田村耕一、浅野陽各氏に師事した後、1970年代より現在まで一貫して、磁器に色彩豊かな絵付けをした器を制作し、独自の世界を広げてきました。 作家は、江戸末期に西洋から伝わった、洋絵具を用いることで、伝統的な上絵付けにはない、色絵表現を貫いてきました。様々な色が重なり合った複雑な色層は、素地が白い磁器であることを忘れさせますが、こうした作品の特色は、多くの色を一色ずつ丹念に重ね、焼成を繰り返すことにより生み出されます。
    全面を覆うグラフィカルな文様は、鳥、サボテン、月など自然をモチーフとしながらも、写実的描写から離れ、器に奔放で楽しげなリズムをもたらします。この、遊び心を感じさせる、色と文様の自由な語らいが、作者独特の色絵スタイルだといえましょう。
    本展では、新旧作を合わせたおよそ100点余の作品により、作者が歩んできた、色絵の変遷をご覧いただきます。

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  • 第3回菊池ビエンナーレ展

    2009年3月28日(土)~2009年6月14日(日)

    菊池ビエンナーレは、平成16(2004)年度の第1回より、隔年で開催する現代陶芸の公募展です。3回目となる今回は、昨年度の秋に作品を募り、審査を行いました。ご応募は、20歳代から70歳代までと年代の幅が広く、また、北海道から九州までと全国にわたりました。
    展覧会では、応募総数318点のなかから入選した53点をご紹介させていただきます。入選作のうち入賞したのは7点です。大賞には長崎県の山口淀氏が、優秀賞には高知県の西田宣生氏が、そして、奨励賞には鈴木徹氏(岐阜県)、新里明士氏(岐阜県)、間野舜園氏(愛知県)、南公二氏(大阪府)、和田的氏(千葉県)がそれぞれ選出されました。
    菊池ビエンナーレは、方向性を限定することなく、現代陶芸の〈今〉を見つめようとする試みです。一人一点、未発表の作品で、陶芸に取り組む方であればご応募いただけます。当館の展示室の都合で、入選作の目安をおよそ60点としています。入選の倍率が高くなる年もあるかと思いますが、皆様の、やきものにする想いが表れた、魅力のある作品をご応募いただければ有り難く存じます。
    陶芸を愛する方々にご注目いただけるビエンナーレに育つよう、今後も関係者一同、いっそうの努力をいたします。

2008
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  • 窯ぐれ三代
    加藤唐九郎・重高・高宏

    2008年12月6日(土)~2009年3月8日(日)

    加藤唐九郎(1898~1985)は、近・現代陶芸界の鬼才であり、ひたすらに桃山陶に挑戦を続けました。その波乱に満ちた「窯ぐれ」人生から生み出された作品群は、黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部・唐津・信楽・伊賀・高麗など実に多彩で、茶陶においては他の追随を許さない独自の作風を確立しました。その三男・加藤重髙(1927~)は、唐九郎の側にあって唐九郎を支え続けるとともに、自身も作陶に打ち込み、叩きの技法を用いた迫力ある量感の花器や水指などを生み出し高い評価を受けてきました。加藤高宏は、祖父の作風をも見据えながら自らの世界を確立しつつあります。志野・瀬戸黒などには、独自の創意を加え、造形・釉調ともに強い息吹が感じられます。
    本展では加藤唐九郎の生誕110年を記念して、初期から絶作にいたるまでの多彩な作品群から厳選された代表作により陶芸界に残した大きな足跡を見つめると同時に、その血を受け継ぐ重髙、高宏の代表作をあわせた約110点を一堂に会し、三人の共通性、独自性を展観しようとするものです。

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  • 漆、新しき経験
    ― 池田巖 1960-2008

    2008年10月4日(土)~11月24日(月・祝)

    池田巖(1940~)は二代池田瓢阿の長男として生まれ、幼い頃から父のもとで竹芸を学び、茶の湯の世界に触れ、優れた古典に親しみました。目や手を通じて記憶した技術や古典的な意匠が、池田の造形感覚の素地をはぐくみました。東京藝術大学に進学してからは漆芸家の松田権六に師事し、きゅう漆(きゅうしつ)を赤地友哉に学ぶなど、彼の20代は伝統の徹底した習得に費やされました。
    創作上の転機が訪れたのは1987年、47歳のときのことです。茶の伝統から解き放たれ、竹や漆という素材の魅力をひきだした、シンプルながら緊張感を強調した茶器や花入がつくりだされました。
    そして2005年、池田は再び新しい創作を始めます。漆を塗った竹をたたき割り、引き裂き、「用」をもたない作品が生まれました。それらは竹の強い生命力と漆から発せられる気を放っています。
    池田は古典作品や現代の作品、人との出会いなどから積み重ねた経験をつねに新しい創作に反映させてきました。本展覧会は、3メートル近い大きさの最新作から古典的な茶器まで、作家自選の60点余により構成いたします。

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  • 朴英淑の白磁
    ― 月壺と李禹煥の絵皿

    2008年7月12日(土)~9月15日(月・祝)

    今回は「朴英淑の白磁―月壺と李禹煥の絵皿」と題し韓国の現代陶芸を代表する白磁の女性作家、朴英淑(パク・ヨン スク/1947~)の造形世界をご紹介いたします。
    朴英淑は、32歳で朴英淑セラミック・スタジオを設立し、はじめは粉青沙器、やがて白磁大壺へと、朝鮮王朝時代の陶磁への思いを現代に生きる作家として追求してきました。理想の白磁を実現させるために10年余をかけ、土を探し、配合を研究し、試行錯誤をかさねた情熱は並大抵ではありません。近年では、韓国で月壺(ゲッコ)と称されている大壺を完成させ、その世界観を深めつつあります。
    日本の美術館での個展は、本展が最初となります。出品予定の作品は、白磁大壺7点、白磁壺10点、食器70点で、食器のうち10点を数える大皿、陶板は、世界的に著名な美術家、李禹煥(リー・ウーファン/1936~)が絵付けをした作品です。

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  • 第2回智美術館大賞 現代の茶陶
    ― 造形の自由・見立ての美

    2008年4月5日(土)~6月22日(日)

    菊池寛実記念 智美術館では、展覧会事業の二本柱として一般公募の菊池ビエンナーレ展と現代の茶陶展をそれぞれ隔年に開催し、我国の現代陶芸の育成と向上に寄与したいと願っています。
    「智美術館大賞 現代の茶陶展」と題する展覧会は、現代日本の陶芸界を代表する陶芸家の方々に、作陶家御自身の自由な精神の所産としての茶陶を制作していただき、21世紀初頭の茶陶のあり方を展望するというものです。2006(平成18)年の第一回展では、13名の作陶家の方々にご出品いただき、鈴木藏氏が大賞を、秋山陽氏、小池頌子氏が優秀賞を受賞されました。このたびの第二回展は合計13名の作家の方々にご出品を賜り、開催を予定しております。本展の趣旨をお汲みとりいただき、現代における茶陶の新たな可能性をご高覧いただければ幸甚に存じます。

2007
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  • 十四代柿右衛門展

    2008年1月2日(水)~3月23日(日)

    当館は、開館以来、現代陶芸作家の紹介につとめて参りましたが、このたび、2008年1月2日(水)より、日本の色絵磁器を代表する十四代酒井田柿右衛門氏による「十四代柿右衛門展」を開催する運びとなりました。展覧会では、伝統工芸展出品作を中心に、襲名以前の作品を含むおよそ50点による展観を予定しております。
    有田の酒井田柿右衛門家で濁手(にごしで)と呼ばれてきた白磁の素地は、十七世紀末に最高潮に達し、純白の余白を十分に生かして上絵付された赤絵は、明末清初の中国五彩にはない優雅さによって、ヨーロッパの王侯貴族達の目を奪い、大きな声価を得るとともに十八世紀にマイセンなど各地の窯に影響を与えました。しかしながら世界一といっても過言ではない美しい白磁の赤絵は、十八世紀末頃から衰微し、いつしか途絶えます。
    十二代と十三代柿右衛門は、かつての濁手を復興させることこそ酒井田家の使命と認識し、苦心惨憺の上、遂に濁手の焼成に成功しました。そして十三代の晩年、濁手赤絵の技術は国から重要無形文化財総合指定の認定をうけ、さらに、十四代はその業を継承して工房を整備、日本一の色絵磁器の生産と技術の向上に全力を注ぎました。2001(平成十三)年には、重要無形文化財の個人指定の認定を受けています。展覧会では、歴史と現代が融合する色絵磁器の極みをご高覧いただきたく存じます。

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  • 芹沢銈介の造形 ― 色と模様

    2007年9月29日(土)~12月16日(日)

    芹沢銈介は、沖縄の伝統的な染色技法である紅型(びんがた)に触発され、それを深めて独創的な色と模様の世界を造りだしました。その領域は、着物や屏風をはじめ、物語絵、装幀、図案、字模様、インテリア・デザイン、建築など多岐にわたっています。
    着物や屏風を芹沢造形の到達点とするならば、型染の図案や肉筆のスケッチ、板絵、ガラス絵などの小品は、創造の初動を感じさせる珠玉の作品群と言えるのではないでしょうか。そこではモチーフを見いだしたときの芹沢の喜びが鮮度を保ったまま鮮やかな色彩と躍動する曲線に活かされ、その天性の豊かさと明るさは、観る者の心を瞬時に掬います。
    本展は、およそ100点の作品により芹沢銈介の造形をご紹介いたします。芹沢の仕事を半世紀にわたって見つめ続けた金子量重氏にご監修いただきました。この展覧会が皆様にとって芹沢造形の真髄に触れていただく機会となれば幸いです。

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  • 群青の彼方から ― 小池頌子展

    2007年5月26日(土)~9月2日(日)

    日本陶芸界を代表する作家の一人である小池頌子さん(1943~)は、東京芸術大学で陶芸を学び、同大学院を修了した後、ギャラリーでの個展を中心に活動してこられました。造形性に富むユニークな「器」は、国内は言うまでもなく、海外においても高い評価を受け、英国のヴィクトリア・アンド・アルバート美術館、米国のクリーブランド美術館など多くの美術館に収蔵されています。
    轆轤で成形した原形をフリルや突起状の装飾で変容させていく小池さんの「器」は、白や銀で色づけされ、ときには内側からの虹彩も加わり、貝殻を連想させ、海や空をイメージさせます。彼女の創作の原点には、水や光などの自然への賛嘆と共感の思いがあり、作品にはそれを形にするという喜びが溢れています。近年、さらなる円熟をみせる小池さんの造形世界を、新作を含めた代表作およそ60点により、ご覧いただきます。

2006
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  • 第2回菊池ビエンナーレ展

    2007年3月10日(土)~5月13日(日)

    このたび菊池寛実記念 智美術館では、第2回菊池ビエンナーレ展を開催いたします。本展は、現代日本陶芸界のさらなる発展に助力いたすべく、財団事業の一環として2005年に始まりました。2回目の開催となります本年は、全国各地からのご出品を頂き、応募総数は第1回を上回る267点にのぼりました。第一次、第二次と厳正なる審査を行いました結果、大賞に山本出氏、優秀賞に高垣篤氏をはじめとする、44名の方が入選となりましたのでここに展観いたします。
    なお、今後も隔年での開催を予定しておりますが、公募の趣旨をさらに多くの方々にご理解いただけるよう尽力し、現代日本陶芸の優れた作品を広くご紹介させていただく所存でございます。大いにご期待いただくとともにご協力くださいますようお願い申し上げます。

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  • Tomo Collection
    ― 我が心の陶芸

    2006年11月2日(木)~2007年2月25日(日)

    本展は、美術館の設立者であり、当財団の理事長である菊池智のコレクションで構成され、板谷波山、富本憲吉をはじめ、19作家の作品を紹介いたします。
    菊池智は、戦時下に多感な青春時代を過ごしました。連日の空爆に疲れ、多くの友人たちが死を覚悟して戦地に赴き、ある者は特攻隊員として空の果てに消えて行きました。死と対峙する毎日の中で、ある日、土の塊が火の洗礼を受けて美しい陶器に生まれ変わるところを偶然目にした智は、そこに思いがけない「生」を見いだしました。そして、「全てのものは土から生まれ、いつかは土にかえっていく」という鮮烈な想いから、陶芸は智の人生にとって避けて通れないものとなったのでした。
    菊池コレクションは、1983年に、アメリカ、ワシントンにあるスミソニアン博物館で「ジャパニーズ・セラミックス・トゥデイ」と題した展覧会によって紹介され、その後、同展はロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に巡回いたしました。展覧会は大成功をおさめ、この展覧会を期に諸外国でも日本の現代陶芸への関心が急速に高まりました。センセーショナルな紹介から20余年、当コレクションも内容を充実させてまいりました。一私人が日本文化発展のために情熱を傾けて収集した作品を、どうぞご高覧いただきますようお願い申し上げます。

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  • 智美術館大賞 現代の茶陶
    ― 造形の自由と用の見立て

    2006年8月5日(土)~10月15日(日)

    かつて桃山から江戸時代前期にかけて、千利休や古田織部など、まさに桃山の今に生きた茶の湯者の需要に応えて、茶陶が数々生産され、かつて見ない自由で造形力の豊かな作品が今に伝えられてきました。ところが四百年後の今、桃山におけるような自由闊達な造形性をもつ茶陶は極めて少なく、伝統文化といいながら、いささか閉塞的な状況になっております。
    そこでこのたび、当美術館において、現代日本の陶芸を担っておられる陶芸家の方々に、茶の湯の伝統を見据え、現代に生きる作陶家自身の自由な精神の所産としての茶陶を制作していただき、二十一世紀初頭を象徴する「現代の茶陶展」の開催を企画いたしました。
    何卒、私達の趣旨をお汲みとりいただき、ご高覧いただければ幸甚に存じます。

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  • 杉浦康益 陶の植物園

    2006年4月15日(土)~7月23日(日)

    杉浦康益(1949年~)は、東京芸術大学在学中に「やきものは石である」という教授の言葉に触発され、陶で石を作り始めたというユニークな出発点を持つ作家です。その後モチーフは「石」から「岩」となり、スケールの大きな作品によるインスタレーションを自然の中や屋内空間で発表しています。
    またもう一つの代表作として2000年から発表している「陶の博物誌」シリーズがあります。ルーペで観察しながら実物の数倍の大きさに作った牡丹やヒマワリの花、毬栗(いがぐり)などの木の実は植物の精密な構造をそのままに再現しており、作家自身が自然の造形美に抱く感嘆や畏敬の念を感じさせます。繊細でありながら力強い印象は、風雨に打たれながら大地に根付く植物を日々見つめている作家の心象の所産といえましょう。
    会場内には存在感のある陶の岩と、花や木の実などによる杉浦康益の植物園が展開されます。炎の洗礼を受けて誕生した植物たちをどうぞ楽しくご覧下さい。

2005
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  • 樂吉左衛門
    1999年秋-2005年春 創作

    2005年9月17日(土)~2006年2月26日(日)

    樂茶碗は、桃山時代に、初代長次郎が茶の湯の大成者である千利休の創意を受けてつくり出した茶碗です。以来400余年にわたり、樂家は千家とともに「樂焼 御ちゃわん屋」の暖簾をかかげ、樂茶碗を現代に継承させてきました。手捏ねによる成形方法や内窯を用いた独特の焼成技術など、一碗ずつ丹念に制作する技法は江戸時代の初期から一子相伝で伝えられています。
    当代吉左衛門は、1949年に生まれ32歳で十五代を襲名しました。彫刻的な造形と抽象絵画を思わせる釉薬の妙なる表現を特徴とする当代の作品は、樂茶碗の新たな創造として高く評価されており、日本の伝統文化である茶の湯のあり方を現代に問いかけています。
    本展は、1990年の個展「天問」(菊池ゲストハウス)以来15年ぶりとなります。1999年秋から2005年の春にかけて制作された焼貫黒樂茶碗36点を展観いたします。

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  • 現代ガラスの挑戦 ― 光の彫刻展

    2005年6月4日(土)~8月21日(日)

    現代ガラスは、1960年代のはじめにアメリカで起こったスタジオ・グラス運動がきっかけとなって世界に広まった新工芸の分野です。以来、各国に画家や彫刻家と同じようなグラス・アーティストの世界が形成され、ほぼ半世紀を迎えるこの分野の造形上の展開には目を見張るものがあります。21世紀芸術の新展開にも期待される魅力的な素材として評価されています。
    本展では、600年のガラスの歴史を有しつつ今日世界をリードするチェコの作家と、近年世界的にも注目を集める日本の作家の作品を中心に構成し、多彩で多様な現代ガラスの造形の魅力を紹介いたします。

    出品:チェコ、日本、オーストラリア、ドイツ、韓国、アメリカ、スウェーデンの42名の作家による

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  • 第1回菊池ビエンナーレ展

    2005年4月9日(土)~5月15日(日)

    当館では、現代陶芸界の一助となるべく平成16年度より隔年で菊池ビエンナーレを実施することといたしました。このたびの第一回ビエンナーレ展では、特別大賞を含む37点の入選作品を展示いたします。

    出品作家:國定克彦、鈴木徹、佐藤雅之、神農巌、鈴木卓、平岡朋美、前田正博、板井玲子、太田公典、大谷昌拡、菊地勝、杉浦裕子、森田文雄、李コッタンほか23名

2004
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  • 藤平 伸の芸術 ― 追憶の詩

    2004年11月2日(火)~2005年2月27日(日)

    藤平伸氏は、1922(大正11)年、京都五条で製陶業を営む家に生まれました。本格的に作陶の道を歩み始めたのは三十歳を過ぎてからでしたが、1953(昭和28)年、初出品の第9回日展で入選、第13回日展では、特選・北斗賞を受賞されています。
    また京都市立芸術大学では、長年にわたり後進の指導、育成にあたられ、京都府より文化賞特別功労賞を授与されるなど、氏の功績は高く評価されています。主として手びねりによって作り出される作品は、どれも軽やかさと詩情にあふれ、作者の幼い頃の記憶や夢の断片をかいま見るようであります。伝統的な京都のやきものという概念からは想像もつかない、型にはまらない伸び伸びとした作風には、氏のおおらかで温かな人柄がうかがえます。
    展覧会では、作家所蔵の作品に、菊池コレクションを加え、1970年代から近年までの、およそ80余点の作品をご紹介いたします。今回は、氏の五十余年にわたる作陶活動の全貌をご覧いただける貴重な機会でもあります。

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  • 藤本能道の色絵

    2004年4月17日(土)~9月30日(木)

    藤本能道(1919~1992)は、富本憲吉、加藤土師萌に薫陶を受けた、戦後の色絵磁器を代表する作家の一人です。ことに1970年頃から晩年にかけての20余年間には、色絵磁器の可能性を追求し、独自の世界を切り開きました。
    本展では、「幻の食器」と名づけられた昭和天皇皇后両陛下御使用のディナーセットを中心に、80点余の作品をご紹介いたします。
    ディナーセットは、1976年、茨城県下を植樹祭で回られ、菊池家の経営するホテル(茨城県高萩市)に宿泊された両陛下の晩餐用に、菊池智が制作を依頼したものです。総数230ピースの大作で、一般に公開するのは本展がほぼ初めてとなります。

2003
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  • Japanese Ceramics Today, Part 2

    2003年9月30日(土)~2004年3月7日(日)

    菊池寛実記念智美術館では、開館を記念して開催いたしましたJapanese Ceramics Today, Part 1にひき続き、Part 2として菊池コレクションをご紹介いたします。
    本展は、Part 1の陳列の一部を展示替えし、総作品数91点のうち半数以上がスミソニアン展以降20年の間に新たにコレクションに加えられた作品となっています。

    出品作家: 岡部嶺男、加守田章二、栗木達介、藤平伸、藤本能道、三浦小平二、八木一夫ほか49名

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  • Japanese Ceramics Today, Part 1

    2003年4月19日(土)~9月23日(火)

    菊池コレクションのなかから選出いたしました100点、69名の作家による作品を展示し、現代陶芸のあり方を展観するものです。

    出品作家:岡部嶺男、隠崎隆一、加藤唐九郎、加守田章二、鈴木藏、栗木達介、深見陶治、藤平 伸、三浦小平二、八木一夫ほか59名